税金は、都道府県によって違う?
税金にはさまざまな種類がありますが、地域によって納税額が異なる税金があることをご存じでしょうか。自治体に納める税金のひとつである「住民税」がそれにあたります。また、所得に応じて納税額が決まる税金には他に「所得税」がありますが、これは国に納める国税であり、地域による金額の違いはありません。
自治体によって納める税金に差があるのなら、移住先を検討する際は税金の違いも考慮に入れるべきでしょうか? 実際のところ、都道府県によってどのくらいの差があるのか調べてみましょう。
そもそも住民税とは?
教育や福祉・防災・ゴミ処理など、地域の行政サービスを行うために必要な費用を、住民が分担するのが住民税です。前年に一定金額以上の所得がある人に課され、その年の1月1日に住民票がある自治体に納税します。内訳は以下のようになっています。
住民税は2種類
種類 | 所得割 | 均等割 |
---|---|---|
市区町村民税 | 課税額×6% ※1 | 自治体による |
都道府県民税 | 課税額×4% ※2 | 自治体による |
※1 神奈川県横浜市、兵庫県豊岡市、愛知県名古屋市は除きます。
※2 神奈川県は除きます。
住民税には都道府県民税と市町村民税(東京都23区は特別区民税)の2種類があります。どちらも、所得に応じて決まる「所得割」と、所得に関わらず一律で課される「均等割」で構成されています。
所得割
所得割は、収入額を元にして計算されます。一部の自治体を除いて、課税所得に決まった税率をかけた金額になります。したがって、大半の都道府県・市区町村では差はありません。所得割が異なる一部の自治体については、この後紹介します。
均等割
均等割は所得の多寡にかかわらず住民に一律の金額が徴収される計算方法です。この均等割にも標準税率が設定されています。しかし、財政状況に応じて都道府県・市区町村が決めることができ、均等割が自治体によって異なる場合があります。
住民税が一番高い都道府県は?
住民税の仕組みがわかったところで、実際に住民税の金額を比べてみましょう。自治体による違いが出るポイントである均等割の金額をベースに、都道府県別にまとめました。
住民税の都道府県別ランキング
順位 | 都道府県 | 市区町村 | 都道府県の均等割/年 | 市区町村の均等割/年 | 均等割の合計/年 | 都道府県の所得割 | 市区町村の所得割 |
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1 | 神奈川県 | 横浜市 | 1800円 | 4400円 | 6200円 | 4.03% | 6.00% |
2 | 宮城県 | - | 2700円 | 3500円 | 6200円 | 4.00% | 6.00% |
3 | 岩手県 | - | 2500円 | 3500円 | 6000円 | 4.00% | 6.00% |
3 | 山形県 | - | 2500円 | 3500円 | 6000円 | 4.00% | 6.00% |
3 | 福島県 | - | 2500円 | 3500円 | 6000円 | 4.00% | 6.00% |
3 | 茨城県 | - | 2500円 | 3500円 | 6000円 | 4.00% | 6.00% |
3 | 岐阜県 | - | 2500円 | 3500円 | 6000円 | 4.00% | 6.00% |
3 | 三重県 | - | 2500円 | 3500円 | 6000円 | 4.00% | 6.00% |
9 | 兵庫県 | 豊岡市 | 2300円 | 3500円 | 5800円 | 4.00% | 6.10% |
10 | 秋田県 | - | 2300円 | 3500円 | 5800円 | 4.00% | 6.00% |
10 | 滋賀県 | - | 2300円 | 3500円 | 5800円 | 4.00% | 6.00% |
10 | 兵庫県 | - | 2300円 | 3500円 | 5800円 | 4.00% | 6.00% |
13 | 栃木県 | - | 2200円 | 3500円 | 5700円 | 4.00% | 6.00% |
13 | 群馬県 | - | 2200円 | 3500円 | 5700円 | 4.00% | 6.00% |
13 | 愛媛県 | - | 2200円 | 3500円 | 5700円 | 4.00% | 6.00% |
16 | 京都府 | - | 2100円 | 3500円 | 5600円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 富山県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 石川県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 山梨県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 長野県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 愛知県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 奈良県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 和歌山県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 鳥取県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 島根県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 岡山県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 広島県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 山口県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 高知県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 福岡県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 佐賀県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 長崎県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 熊本県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 大分県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 宮崎県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
17 | 鹿児島県 | - | 2000円 | 3500円 | 5500円 | 4.00% | 6.00% |
37 | 静岡県 | - | 1900円 | 3500円 | 5400円 | 4.00% | 6.00% |
38 | 神奈川県 | - | 1800円 | 3500円 | 5300円 | 4.03% | 6.00% |
39 | 大阪府 | - | 1800円 | 3500円 | 5300円 | 4.00% | 6.00% |
40 | 愛知県 | 名古屋市 | 2000円 | 3300円 | 5300円 | 4.00% | 5.70% |
41 | 北海道 | - | 1500円 | 3500円 | 5000円 | 4.00% | 6.00% |
41 | 青森県 | - | 1500円 | 3500円 | 5000円 | 4.00% | 6.00% |
41 | 埼玉県 | - | 1500円 | 3500円 | 5000円 | 4.00% | 6.00% |
41 | 千葉県 | - | 1500円 | 3500円 | 5000円 | 4.00% | 6.00% |
41 | 東京都 | - | 1500円 | 3500円 | 5000円 | 4.00% | 6.00% |
41 | 新潟県 | - | 1500円 | 3500円 | 5000円 | 4.00% | 6.00% |
41 | 福井県 | - | 1500円 | 3500円 | 5000円 | 4.00% | 6.00% |
41 | 徳島県 | - | 1500円 | 3500円 | 5000円 | 4.00% | 6.00% |
41 | 香川県 | - | 1500円 | 3500円 | 5000円 | 4.00% | 6.00% |
41 | 沖縄県 | - | 1500円 | 3500円 | 5000円 | 4.00% | 6.00% |
上の表では、均等割の合計(都道府県民税+市町村民税)が高い順にランキングしました。均等割は年額です。ただし、市町村民税に標準税率とは異なる税率を設定している、神奈川県横浜市・兵庫県豊岡市・愛知県名古屋市については県単位とは別に単独で集計しています。
1位の横浜市では均等割の合計が6,200円、最下位の10都道県では5,000円と、1000円以上の差がつきました。
住民税が日本一高いのは神奈川県横浜市
均等割の標準税率は現在、市町村民税が3,500円・都道府県民税が1,500円です。神奈川県横浜市は市民税が4,400円と高く、さらに神奈川県は県民税の所得割も他都道府県に比べ加算されていることから、横浜市は住民税が最も高い自治体と言えます。
しかし、県民税均等割だけで比較すると、宮城県が2,700円と最も高く、標準税率から1,200円も加算されています。
住民税が都道府県で違う理由は?
住民税のうち主に均等割は、自治体によって異なる場合があることがわかりました。その違いはなぜ生じるのでしょうか。多くの自治体では、森林の整備・保全に関する名目で加算されています。また財政状況により特別に加算される場合もあります。均等割が最も高い神奈川県横浜市、所得割が最も高い兵庫県豊岡市ではそれぞれ、以下のような理由で加算されています。
均等割が日本一高い神奈川県横浜市
『横浜みどり税』として市民税均等割に900円が加算されています。神奈川県の県民税は『水源環境保全税』として均等割は標準税額に300円加算、所得割にも0.025%が超過課税されています。
参考:横浜市-横浜市の住民税は高い?https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/zeikin/faq/answer1.html
所得割が日本一高い「兵庫県豊岡市」
兵庫県豊岡市は、所得割の市町村税が6.1%と日本一高くなっています。豊岡市の所得割が高い理由は、都市計画の資金確保です。都市計画資金を確保するために、固定資産税の超過課税のみが検討されていました。しかし、資産があっても収入の少ない世帯や法人の償却資産へも課税されてしまうことに不公平との声があがったため、固定資産税を0.1%あげる他、市民税の所得割も0.1%あげる運びとなりました。
「北海道夕張市」は2017年に超過課税がなくなり標準税率に
北海道夕張市は2004年から所得割が日本一高い地域となった時期がありました。財政再建団体に指定された2007年から、財政を補うために夕張市では超過課税が採用されました。それにより夕張市の所得割が標準税率の6%から6.5%となり、2014年になると均等割に500円の超過税率が採用されました。市民税と道民税を合計した住民税は5,500円となり、所得割が日本一高い地域となったのです。
しかし、計画の見直しにより2017年に均等割への超過課税(500円)がなくなり5,000円に、所得割は標準税率の6%となりました。2017年の住民税の見直しにより、夕張市が特出することなく、北海道の均等割を基準とした住民税ランキングでは41位となりました。
実際の住民税の差は?
住民税の高い自治体と安い自治体では、実際に1年間で納税する金額はどれくらい違うのでしょうか。簡易的にシミュレーションしてみましょう。所得割は、収入から各種控除を差し引いた「課税標準額」をもとに計算します。住民税は以下の合計です。
(a)課税標準額×都道府県民税の所得割税率
(b)課税標準額×市町村民税の所得割税率
(c)均等割(都道府県分+市町村分)
年間の給与収入が500万円程度のサラリーマンを想定し、課税標準額を仮に240万円として計算してみましょう。
「均等割」が1番高い地域と1番低い地域で比較
前述のランキングの均等割が最も高い神奈川県横浜市と、最も安い沖縄県で計算してみましょう。
• 神奈川県横浜市の場合:240万円×4.025%+240万円×6%+6,200円=246,800円
• 沖縄県の場合:240万円×4%+240万円×6%+5,000円=245,000円
年間の住民税の差額は1,800円となります。トップと最下位でも、意外と違いが少ないという結果になりました。
「所得割」が1番高い地域と1番低い地域を比較
前述のランキングで所得割が最も高い兵庫県豊岡市と、最も安い愛知県名古屋市で計算してみましょう。
• 兵庫県豊岡市:240万円×4%+240万円×6.1%+5800=248,200円
• 愛知県名古屋市:240万円×4%+240万円×5.7%+5300=238,100円
年額の住民税の差額は10,100円となります。兵庫県豊岡市と愛知県名古屋市では所得割に0.4%の差があり、その分住民税の金額にも差が出てしまいました。
まとめ
都道府県によって住民税が異なり、税率によって差があることがわかりました。地方移住では住宅費や光熱費の他に移住先の住民税も知っておくと安心ですね。税金が行政サービスや町づくりにどのように使われているかも、移住先候補を検討する際に調べてみるといいかもしれません。