移住者への起業支援、創業支援制度がある自治体は?開業率が高い地域も紹介
更新日: Jul 17, 2020

移住先で起業する場合、多くの地域で起業支援、創業支援制度が利用できます。起業にかかる費用を助成してもらえたり、低金利で融資をしてもらえたりします。都心ではなく地方で起業するメリットやデメリット、起業支援が受けられる自治体をご紹介します。
目次
地方移住者が利用できる起業支援制度とは?

起業支援制度を利用すると、起業にかかる初期費用を助成してもらえたり、低金利で起業資金の借り入れができたりします。地域によって独自に起業支援制度を設けているため、支援内容も自治体によってさまざまです。2019年度から内閣府の「地方創生起業支援事業」もスタートしました。
内閣府の「地方創生起業支援事業」とは?
2019年度からスタートした内閣府の「地方創生起業支援事業」は、IUJターン者が地方で起業する際に、支援金を交付する事業です。地方創生起業支援事業は地方公共団体が主体となって実施するものですが、国から支給される地方創生推進交付金が利用できるため、自治体も実施しやすい制度となっています。
地方創生起業支援事業の実施期間
地方創生起業支援事業は、2019年度から6年間を目途に実施されます。地方公共団体が主体で実施するため、開始時期や給付金の支給額などの詳細は地域によって異なります。
地方創生起業支援事業の対象者
- 東京圏以外の都道府県、または東京圏内の条件不利地域で起業をすること。
- 地方創生起業支援事業の公募期間内に個人開業届けまたは法人の設立を行うこと。
- 起業する都道府県内に居住している、または居住する予定があること。
地方創生起業支援事業は都心ではなく地方で起業する場合に利用できる制度です。東京圏は対象外となり、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の地域を指します。
ただし、東京圏でも「条件不利地域」は地方創生起業支援事業の対象となります。条件不利地域とは、自然や地理的な条件が悪く、都心に比べると経済が遅れをとっているような地域のことです。地方創生起業支援事業の公式HPに掲載されている東京圏の条件不利地域は以下の通りです。
【東京圏の条件不利地域】
都道府県 | 市区町村 |
---|---|
東京都 | 檜原村、奥多摩町、大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ヶ島村、小笠原村 |
埼玉県 | 秩父市、飯能市、本庄市、ときがわ町、横瀬町、皆野町、小鹿野町、東秩父村、神川町 |
千葉県 | 館山市、勝浦市、鴨川市、富津市、いすみ市、南房総市、東庄町、長南町、大多喜町、御宿町、鋸南町 |
神奈川県 | 山北町、真鶴町、清川村 |
地方創生起業支援事業での給付金
地方で起業する場合、起業支援金として給付金を受け取ることができます。起業支援金を受け取ることができるかは、地域課題に取り組む事業かどうかで判断されます。「社会性」「事業性」「必要性」の観点から審査が行われます。
「地方創生起業支援事業」で受け取ることができる起業支援金は最大200万円ですが、地域によって金額は異なります。起業する地域でいくらの起業支援金が受け取ることができるかは、各自治体のHPで確認してください。
地方で起業するメリットは?

地方で起業をするメリットは、起業支援が受けられる以外にもあります。例えば、起業する会社や店舗の賃料や人件費が安く抑えられるため、都心で起業する場合と比べるとコストが抑えられる傾向にあります。
地方の特色を活かした事業などであれば、地方を盛り上げたい、応援したいと考える人から協力を得やすくなります。インターネットをうまく活用すれば、起業した地域の人だけでなく、都心に住んでいる人もターゲットにしてビジネスを展開することも可能です。
また、地方で起業する際は、居住地を地方に移す人も多いでしょう。地方では子育て世帯向けのサポートが手厚いなど、穏やかな環境に加え、子育てのしやすさもメリットになります。
地方で起業するデメリットは?

地方で起業する際にデメリットもあることを理解しておきましょう。起業支援では、起業にかかる初期費用をサポートしてくれる制度がほとんどで、起業後の支援は充実していません。起業後すぐにビジネスが軌道に乗れば、ある程度の収入を得ることができますが、そう簡単にいかないことも十分あり得ます。
また、地方は都心と比べるとセミナーなどのイベントも少なく、情報収集がしにくい点もデメリットです。昨今ではオンラインセミナーなども注目されているため、うまく情報収集する方法を見つけることが重要だと言えるでしょう。
地方で起業する際に居住地も地方に移す場合は、起業準備の他に移住準備も必要になります。会社に勤めながら地方移住と起業の準備をするのは大変です。地方で起業する際は、移住準備をいつどのように進めるかなどの計画を立てることも重要です。
開業率が高い都道府県ランキング
順位 | 都道府県 | 開業率 | 順位 | 都道府県 | 開業率 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 沖縄県 | 9.3% | 25 | 滋賀県 | 4.7% |
2 | 埼玉県 | 7.4% | 26 | 長崎県 | 4.7% |
3 | 千葉県 | 7.2% | 27 | 愛媛県 | 4.6% |
4 | 神奈川県 | 7.1% | 28 | 和歌山県 | 4.5% |
5 | 福岡県 | 6.9% | 29 | 宮崎県 | 4.4% |
6 | 大阪府 | 6.4% | 30 | 岐阜県 | 4.4% |
7 | 兵庫県 | 6.4% | 31 | 広島県 | 4.4% |
8 | 愛知県 | 6.2% | 32 | 香川県 | 4.4% |
9 | 茨城県 | 6.0% | 33 | 鹿児島県 | 4.4% |
10 | 東京都 | 5.9% | 34 | 北海道 | 4.4% |
11 | 群馬県 | 5.7% | 35 | 石川県 | 4.1% |
12 | 京都府 | 5.7% | 36 | 鳥取県 | 4.0% |
13 | 奈良県 | 5.6% | 37 | 徳島県 | 3.7% |
14 | 三重県 | 5.5% | 38 | 高知県 | 3.7% |
15 | 熊本県 | 5.5% | 39 | 長野県 | 3.7% |
16 | 岡山県 | 5.4% | 40 | 山形県 | 3.4% |
17 | 栃木県 | 5.4% | 41 | 富山県 | 3.3% |
18 | 宮城県 | 5.2% | 42 | 福井県 | 3.3% |
19 | 山梨県 | 4.9% | 43 | 青森県 | 3.3% |
20 | 佐賀県 | 4.9% | 44 | 岩手県 | 3.1% |
21 | 福島県 | 4.8% | 45 | 島根県 | 3.1% |
22 | 静岡県 | 4.8% | 46 | 新潟県 | 3.0% |
23 | 大分県 | 4.8% | 47 | 秋田県 | 2.8% |
24 | 山口県 | 4.8% | 全国平均 | 5.6% |
上の表では、中小企業庁の「中小企業白書(2019年版)」で報告されている2017年度の都道府県別開業率を記載しています。
開業率とは、特定期間、地域で登録されている事業所(企業)数のうち、新規に開業した事業所数が占める割合のことを指します。開業率が高い=起業が活発だと考えていいでしょう。
ランキングを見ると、開業率が一番高いのは沖縄県の9.3%です。その次に埼玉県7.4%、千葉県7.2%と続きます。東京都は開業率5.9%で10位となりました。
起業支援制度が利用できる自治体は?

2020年7月時点で起業支援制度を実施している自治体を8つご紹介します。
創業支援・空き店舗等活用事業補助金(青森県十和田市)
青森県十和田市の創業支援・空き店舗等活用事業補助金は、市内の空き店舗や空き家などを活用し事業を開始する人を支援する制度です。起業するために空き店舗や空き家などを改修した場合、かかった費用の1/2の額(上限50〜300万円)が助成されます。 補助金の交付条件は、
- 空き店舗などを活用して2年以上継続して営業する見込みがあること
- 営業期間が通年及び週4日以上であり、かつ営業時間が1日5時間以上であること
- 市内に事業所を有する施工業者に改修等を請け負わせること
などです。
松島町創業者支援事業補助金制度(宮城県松島町)
宮城県松島町の松島町創業者支援事業補助金制度では、起業にかかった経費を助成してもらえます。助成金額は、起業にかかった経費の1/2の額、または100万円のうち、少ない方の額を受け取ることができます。
補助金の上限額は松島町の公式HPには記載がなく、「予算の範囲内で交付する」と記されています。対象経費は、「店舗等改修費、設備費、原材料費、書類等作成費、その他町長が必要と認める経費」です。 補助金の交付条件は、
- 松島町に店舗や事務所を設置、または設置しようとしていること
- 町長からセミナーなどの受講を指定された場合、原則、受講すること
- 松島町を管轄する商工会の経営指導等を受け、かつ、会員になること
- 支援することが適当であると認められる事業を行っていること
などです。
雇用創出活動支援事業(秋田県八峰町)
秋田県八峰町の雇用創出活動支援事業では、創業支援費として、創業にかかった初期費用の1/2の額(上限100万円)を補助金として受け取ることができます。対象経費は、「事業用施設の土地・建物の借料」「設備・機械・備品・構築物の製作費」「マーケティング活動の経費」「法人登記に必要な経費」などです。 補助金の交付条件は、
- 新規事業(創業)に取り組み、八峰町の住民1名を常用雇用すること
- 申請者が設備投資を実施(事業所・工場・設備等固定資産の新増設)を伴う事業であること
- 農林水産業の場合は、法人であること
- 補助金の交付のあった年度の翌年度から3年間、事業の成果について報告すること
などです。
羽咋市起業家支援補助金(石川県羽咋市)
石川県羽咋市の羽咋市起業家支援補助金は、創業経費の1/2の額(最大150万円)を助成してもらえる制度です。補助金額は基本額の30万円に、それぞれ条件を満たしていれば加算される仕組みです。
例えば、中心商店街の場合は上限30万円が加算、女性・若者(45歳未満の起業家)の場合は上限60万円が加算、市外からの転入者の場合は上限30万円が加算されます。起業支援金は、市内で新たに創業する人、市税などの滞納がない人が対象となります。 補助対象経費は、
- 空き店舗や駐車場などの賃借料(最高6ヶ月分)
- 店舗などの建設費、取得費、改装費
- 開業に伴う広告宣伝費(HP作成費を含む)
- 起業に必要な設備費など
- その他市長が必要と認める経費
です。
池田町起業支援事業補助金(福井県池田町)
福井県池田町の池田町起業支援事業補助金は、町内で起業をする際にかかった経費を一部助成しもらえる制度です。町内の地域課題を解決できるような事業を創業する場合に、池田町起業支援事業補助金制度を利用することができます。補助金は合計350万〜750万円以内の範囲で以下の通りに支給されます。
- 建設、新築、改造費、機械や装置の購入費は、補助率7/10
- 店舗などの建物または土地にかかる費用は、補助率7/10で上限70万円
- 人材育成や外部コンサルティング委託費は、補助率3/10で上限30万円
補助金の交付条件は、
- 創業に伴う店舗等の新築、または改造をしようとすること
- 町内に本店をもつ法人、または町内に本店をもつ法人の設立を予定していること
- 常時従業者が10人以下の小規模事業者であること
- 住民税などの滞納がないこと
です。
創業支援補助金(鳥取県境港市)
鳥取県境港市の創業支援補助金では、創業にかかる初期費用を助成してもらえる制度です。補助率は対象経費の1/2で上限30万円までですが、山陰以外からのIターン移住者には50万円が加算されます。 対象経費は、4つの区分に分けられており以下のような経費です。
- 事業拠点費(電気設備費・パソコンなどの機械器具費など)
- 宣伝広告費(ホームページ制作費、チラシデザイン費など)
- 法人登記費(法人設立時の登記に要する経費 )
- その他対象経費(消費税及び地方消費税並びに送料、振込手数料など)
補助金の交付条件は、
- 補助金の申請後、市長が発行する証明書の交付を受けていること
- 市税の滞納がないこと
- 創業の日までに市内に居住し、住民基本台帳法に規定する本市の住民基本台帳に記録されていること(個人事業主の場合)
- 創業の日までに市内を本店所在地とした法人登記が行われていること(法人の場合)
です。
起業支援補助金(長野県大町市)
長野県大町市の起業支援補助金は、起業初期費用で対象経費100%(上限100万円)が助成される制度です。 対象経費は、以下の通りです。
- 設備費または備品費
- 法人登記費、知的財産権登録費
- 広告宣伝費または市場調査費
- 技術指導受入れに要する経費
- その他市長が必要と認める経費
補助金の交付対象条件は、
- 大町市創業支援協議会の相談窓口で、起業のための指導を受けていること
- 事業内容が地域の活性化の役に立つものであること
- 起業後3年以上、市内で事業を継続すること
- 起業する事業が、ほかの制度に基づく補助を受けていないこと
- 補助金の請求までに、市内に住民登録をし、起業後3年以上居住すること
などです。
起業家支援事業補助金(京都府福知山市)
京都府福知山市の起業家支援事業補助金は、起業経費の一部を助成してもらえる制度です。補助金額は、ソフト事業が「起業経費の1/2(上限20万円)」、ハード事業が「起業経費の1/4(50万円)」となっています。ソフト事業とはサービスなど形として残らないものを提供する事業で、ハード事業とは形に残るもの・目に見えるものを提供する事業のことです。 補助金の交付条件は、
- 市内で新たに起業・起業を行うこと、または起業・創業を実施後1年未満であること
- 他の法人、団体などの代表または役員の職に就いていない人
- 過去に、創業に係る補助金の交付を受けていないこと
- 福知山市起業おうえん助成金の交付決定を受けている、または受ける見込みであること
などです。
まとめ

起業支援制度は、地方で起業する場合の起業経費負担を自治体がサポートしてくれる制度です。2019年度から内閣府の「地方創生起業支援事業」もスタートしました。自治体により実施期間は異なるので、地方での起業を検討するなら、起業支援制度を実施しているか調べてみるといいでしょう。起業支援制度をうまく活用して、起業にかかる費用負担を少しでも軽減できるといいですね。