空き家バンクとは?自治体と民間業者の違い?それぞれの特徴、メリット・デメリットは?
更新日: Oct 14, 2020

移住先での家探しに「空き家バンク」を利用しようとして検索すると、自治体の空き家バンクや、HOMESなどの民間不動産業者の空き家バンクが出てきます。複数ある空き家バンク、それぞれの特徴やどの空き家バンクがおすすめかを解説します。
目次
空き家バンクとは?

空き家バンクとは、家の所有者と自治体、そして移住者の3者をつなぐためのマッチングシステムです。空き家を手放したい所有者、移住者を受け入れたい自治体、そして低予算で住宅を購入したい移住者の全員に利益がある仕組みとなっています。
地方の空き家問題を解決するための施策が空き家バンク

現在の日本では、空き家の増加が社会問題となっています。総務省による住宅・土地統計調査によれば、2013年の時点で約820万戸だった空き家が、その後20年間のうちに1.8倍にまで増加したことがわかっています。
さらに2033年には、空き家数は2,150万個まで増え、全国の空き家が占める割合は30.2%にまで上昇することが予想されているのです。
一方で、各最寄駅から1km以内にあり、手入れや修繕を行えば十分再活用できる空き家が、およそ48万戸もあるとされています。まだまだ使える空き家物件を有効活用するために、自治体は積極的に移住者への物件情報を公開しています。
自治体の運営する空き家バンクだけでなく、民間不動産業者がマッチングするケースもあります。空き家バンクは、自治体と民間不動産業者のどちらを利用するべきか、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて考えてみましょう。
空き家バンクの仕組みは?

自治体が運営している空き家バンクの制度は、空き家物件の情報を公開したり、所有者と移住者の橋渡しをすることのみです。
所有者⇔自治体+不動産業者⇔移住希望者
実際の売買契約や賃貸契約などの仲介は「宅建協会」や「全日本不動産協会」に所属している不動産業者が行う場合があります。
自治体は、不動産の取扱いについてほとんど知見がありません。そのため、自治体の空き家バンクを利用しても、自治体が直接的に手厚いサポートを行ってくれるというわけではありません。
空き家バンクの目的は?

空き家バンクの目的は、各自治体への移住者を受け入れ、定住者を増やすことを目的としています。移住定住を促進することは地域の活性化につながります。
記事冒頭でも触れたように、現在管理されていない空き家の増加が日本の深刻な社会問題となっています。空き家の増加は、防犯上や環境問題の面から見ても地域に良い影響を与えません。
余っている空き家を他からの移住者に有効利用してもらい、循環させていくことが空き家バンク制度の主たる目的です。
空き家バンク利用のメリット

空き家バンクは、関わる人や地域、それぞれにメリットがあります。ここでは主に3つのメリットについて詳しくお伝えします。
空き家バンク登録物件は安い
空き家バンクの魅力は、格安で家の購入や賃貸が可能なことです。地方では、移住者や定住者を獲得するために、相場価格よりも低い値段で物件を紹介しています。また、間に不動産業者が介入する場合、仲介手数料が不要なケースもあります。
所有者、自治体、移住者がWinWInWIn
空き家バンクの制度は、空き家の所有者・自治体・移住者の3者にとって利益のあるWinWinWinの関係が成立するのも大きなメリットです。
空き家を更地にして土地だけを販売するのにはとても大きなコストがかかるため、家の所有者はそのまま家ごと手放すのがいちばん得になります。
また、自治体は地域にこれ以上空き家が増えてしまうのを防ぎながら、他県からの人口流入を確保し地域活性化を図れます。さらに、移住者は低価格で戸建ての住宅を手に入れられるという、三者三様のメリットがあるのです。
補助金利用でさらに安く
多くの自治体では、空き家バンクを通じて物件を購入・賃貸する人に対して補助金を支給しています。物件の購入費や改修工事費、リフォーム・リノベーション費用などの一部を補助してくれます。
各自治体によって補助が出る項目や額の規模は異なりますので、一度チェックしてみてください。移住者の年齢や家族構成などの条件が設定されていることもあるので、あわせてチェックしてみましょう。
空き家バンク利用のデメリット

空き家バンクには、デメリットとなり得る注意点もいくつかあります。欠点や注意点を踏まえて、利用を検討していきましょう。
所有者と直接交渉する必要がある
自治体の空き家バンク制度は、空き家の情報を公開したり、提供したりすることのみとなります。そのため移住者は、所有者との交渉や契約を直接行う必要があります。
不動産の取り扱いに慣れていない者同士が直接交渉や契約をすることは、後々トラブルになる危険性もありリスクがあります。
ただし、自治体によっては地域の宅建業者が協定を結び、仲介役を担ってくれることもあるので、各自治体のシステムを把握しておくことも必要です。
公開されている情報が少ない
空き家バンクの情報サイトを見てみると、公開されている情報が少ないことに不安を抱く方もいるでしょう。
空き家バンクは一般公開されている情報なため、詳しい情報を提示することでいたずらや不法侵入などを招くおそれがあります。
移住希望の方は、必ず現地での下見や内覧をして、物件の細部までしっかり調査しましょう。
全国すべての自治体にはない
空き家バンクは、全国どこの自治体にも設けられた制度ではありません。空き家バンクを実施しているのは、2013年の時点で全国の56%と約半数です。
そのため、空き家バンクの情報だけを見ていると、出会える物件や選択できる移住地の幅を狭めてしまうことになります。全国共通の制度ではないことを念頭に置き、民間業者のマッチングサイトをあわせて見ていくことが重要です。
空き家バンクの種類と特徴
JOIN | 民間事業 | 自治体・団体 | (参考)民間の不動産業者 | |
---|---|---|---|---|
運営 | 一般社団法人移住・交流推進機構 | LIFULLHOMES、アットホーム、スーモなど | 各自治体・団体 | 各不動産仲介業者 |
掲載エリア | 全国(全件ではない) | 全国(全件ではない) | 各自治体のみ | 全国 |
特徴 | ・自治体が掲載した物件情報が検索できる・自治体からのおすすめ情報あり | ・Web構成が見やすい・テーマ別に検索できる・使いやすい | ・Webの見やすさに差がある・JOIN、民間も最終的にはココにつなぐ・地元の人なので物件の周辺情報に詳しい | ・仲介手数料が必要・営利目的・媒介契約した物件のみ・好条件物件が多い |
現地案内 | × | △(一部) | 〇 | 〇 |
契約仲介 | × | × | × | 〇 |
空き家バンクには、民間不動産業者が運営するマッチングサイトもあります。自治体が運営しているものとの具体的な違いと、それぞれのメリット・デメリットを比較します。
JOINの空き家バンク
一般社団法人移住・交流推進機構JOINによる空き家バンクのWebサイトです。全国の自治体の空き家バンク情報を集約しており、物件の検索手順も簡単です。
物件情報には、各自治体の空き家バンクのリンクや問い合わせ先が掲載されており、JOINが仲介に関与することはありません。こちらのサイトでは、田舎暮らしや仕事に関する移住情報を総合的に取り扱っています。
外部リンク:一般社団法人移住・交流推進機構JOIN
民間事業者の空き家バンク
民間の不動産業者も、全国自治体が管理する空き家物件の情報を提供しています。代表的なサイトは、LIFULLHOMES、アットホーム、スーモなど。不動産専門業者なので、物件一覧や各物件情報のページも見やすくなっているのが特徴です。
移住生活ならではの「農地付き」「店舗付き」「古民家」などのこだわり検索も可能。空き家バンクに関係する自治体の支援制度についても同時に掲載しているので便利です。
ただし、空き家バンクの情報をすべて網羅しているわけではなくムラがあります。複数の業者サイトや自治体の空き家バンクと並行して物件探しをするのがおすすめです。
一部の自治体を除いて、民間業者は空き家の仲介に関与しません。物件の内覧や具体的な商談には、自治体の職員や協定を結んでいる業者が入る場合もありますが、所有者と移住者の直接交渉になることもあります。
民間事業者が提供する空き家物件情報でも、自治体の助成制度がある場合は利用可能です。
自治体が運営するの空き家バンク
自治体が運営している空き家バンクは、地方移住支援サイトや自治体の公式HPなどで公開されています。各自治体ごとで独自にシステムやWebページを作っているため、見やすさや・使い勝手・掲載件数はさまざまです。
前の項目で紹介したJOINや民間事業者も、自治体の空き家情報を掲載しているだけに過ぎませんので、最終的には自治体につながります。自治体の職員は、物件の周辺情報に詳しいのでよりリアルな情報がもらえる可能性もあります。
参考:民間不動産業者の空き家物件
民間不動産業者も、空き家物件を取り扱っています。民間の業者は、営利目的で空き家の情報を提供し、仲介も行います。
仲介には手数料が発生しますが、所有者とのトラブルを避けるためや、スムーズな契約を進めるためにも業者に入ってもらうほうが安心ともいえます。
手数料がかかる分、物件の状態や条件などは比較的レベルの高いものが多く、満足のいく物件に出会えるかもしれません。
空き家バンク利用の流れ

空き家バンクを利用するときの実際の細かい流れを解説します。具体的なイメージをしながら、シュミレーションしてみましょう。
1、空き家バンクで物件を探す
まずは、移住を希望する地域の空き家情報を探します。自治体の空き家バンク、民間事業者など、どのマッチングサイトでもOKです。希望の移住先に、どの程度空き家があるか、相場はどの程度の価格かといった情報収集をしながら探していきましょう。
2、自治体や団体へ問い合わせ
気になる空き家物件を見つけたら、自治体や団体に問い合わせをします。民間事業者のサイトから見つけた物件でも、自治体の窓口に問い合わせをしてください。
3、空き家バンク利用申込書に登録
空き家バンクの利用には、登録申込書を記入して提出する必要があります。各自治体の窓口、もしくは郵送にで送付します。
4、現地を下見
利用の申込が済んだら、気になる物件の下見をします。自治体の職員が案内してくれる場合もありますが、空き家の所有者と連絡を取り合い、交渉を進める場合もあります。このときには、所有者と移住者が直に交渉する「直接交渉」と、間に自治体と協定を結んだ業者が入る「間接交渉」の2つの形態があります。
5、契約
基本的に空き家バンクの契約は、所有者と移住者が直接交わすことが多いですが、自治体によっては提携する不動産業者が間に入って契約手続きを仲介してくれます。この場合は手数料が発生しますが、トラブルに発展するリスクをなくすことができるので安心です。
まとめ

民間の空き家マッチングサイトやJOINを使えば、全国の空き家情報を簡単に検索できます。地方移住をお考えなら、一度は空き家バンクを利用してみるといいでしょう。空き家バンクで物件を探す際は、全国の空き家対策支援制度のチェックも忘れずに。各自治体ごとの空き家対策の施策や補助、助成金額などを簡単に検索できますので参考にしてください。