地方は学童に入りやすい?学童の待機児童問題はどう?待機児童数の都道府県別ランキング
更新日: Sep 2, 2020

学童の待機児童数は年々増加。大都市圏に住むより地方の方が学童に入りやすいのでしょうか?子育て世代が移住を考えるなら、学童の情報も調べましょう。待機児童数が多いのはどこ?学童にまつわる都道府県別ランキングを紹介します。
目次
地方のほうが学童に入りやすい?

両親が共働きなど、日中に保護者が不在の小学生が放課後を過ごす場所のひとつに、学童保育(放課後児童クラブ)があります。しかし、学童保育の利用を希望しても、定員超過などの理由で利用できない子供もたくさんいるのです。
保育園に入れない子供と同じく、学童に入れない子供のことも「待機児童」と呼びます。共働きの子育て世帯にとっては大きな味方の学童ですが、待機児童数は年々増加傾向にあります。
学童の待機児童数は増えている?減っている?
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 |
---|---|---|---|---|
15533人 | 15839人 | 16929人 | 16957人 | 18176人 |
上の表は2015~2019年度の学童に入れなかった全国の待機児童数の推移です。この数値は自治体が把握していない、厚生労働省管轄外の(民間企業が運営する)学童に入っている「隠れ待機児童」が含まれない人数なので、それも含めると待機児童数はもっと多くなるでしょう。
学童に入れないのは、人口の多い東京都や神奈川県など都市部の問題と思われがちですが、必ずしも大都市圏だけの問題とは限りません。市区町村によっては学区内に学童がない場合もあるので、地方移住を検討している子育て世帯は必ず学童があるかチェックをするようにしましょう。
では、学童に入れない待機児童数が多い地域はどこなのでしょうか? 学童にまつわるさまざまな都道府県別ランキングを紹介します。
学童の待機児童数が多い都道府県は?
順位 | 都道府県 | 待機児童数 | 待機児童の割合 | 順位 | 都道府県 | 待機児童数 | 待機児童の割合 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 東京都 | 3912人 | 3.60% | 25 | 岐阜県 | 148人 | 0.90% |
2 | 埼玉県 | 2043人 | 2.80% | 26 | 山形県 | 147人 | 1.00% |
3 | 千葉県 | 1545人 | 2.50% | 27 | 北海道 | 140人 | 0.30% |
4 | 静岡県 | 1090人 | 3.30% | 28 | 広島県 | 127人 | 0.40% |
5 | 兵庫県 | 960人 | 1.80% | 29 | 岩手県 | 119人 | 0.80% |
6 | 愛知県 | 886人 | 1.50% | 30 | 富山県 | 97人 | 0.70% |
7 | 沖縄県 | 719人 | 3.30% | 31 | 栃木県 | 90人 | 0.30% |
8 | 神奈川県 | 619人 | 1.10% | 32 | 奈良県 | 88人 | 0.50% |
9 | 福岡県 | 510人 | 0.80% | 33 | 青森県 | 74人 | 0.50% |
10 | 大阪府 | 469人 | 0.70% | 34 | 鳥取県 | 69人 | 0.90% |
11 | 福島県 | 467人 | 2.10% | 35 | 群馬県 | 67人 | 0.30% |
12 | 宮城県 | 450人 | 1.60% | 36 | 秋田県 | 62人 | 0.60% |
13 | 愛媛県 | 394人 | 2.80% | 36 | 三重県 | 62人 | 0.40% |
14 | 茨城県 | 345人 | 0.90% | 38 | 山梨県 | 60人 | 0.50% |
15 | 香川県 | 296人 | 2.60% | 39 | 和歌山県 | 55人 | 0.60% |
16 | 山口県 | 277人 | 1.80% | 40 | 徳島県 | 46人 | 0.60% |
17 | 佐賀県 | 258人 | 2.20% | 41 | 大分県 | 44人 | 0.30% |
18 | 宮崎県 | 234人 | 1.90% | 42 | 長野県 | 37人 | 0.10% |
19 | 鹿児島県 | 212人 | 0.90% | 43 | 石川県 | 35人 | 0.20% |
20 | 熊本県 | 201人 | 1.00% | 44 | 滋賀県 | 28人 | 0.20% |
21 | 島根県 | 178人 | 2.00% | 45 | 新潟県 | 23人 | 0.10% |
22 | 高知県 | 164人 | 2.20% | 46 | 長崎県 | 17人 | 0.10% |
23 | 岡山県 | 157人 | 0.70% | 47 | 福井県 | 2人 | 0.00% |
24 | 京都府 | 153人 | 0.50% |
上は待機児童数と待機児童の割合をランキングにした表です。民間の学童に入ったり、校区に学童が未設置(学童そのものがない)で申し込めなかったりした子供は「隠れ待機児童」と呼ばれています。
隠れ待機児童は自治体も把握しきれていない事が多く、待機児童数には含まれていないので注意が必要です。
学童の待機児童は大都市圏に多いが、地方でも待機児童問題はある
人口が多いこと、共働き世帯も非常に多いことから東京都がダントツで1位でした。同じ理由からランキング上位は都市部が多いことがわかります。
そんな中、意外にも沖縄県がトップ10にランクインしています。保育園の待機児童も多い沖縄県は都市部と同じく共働きが多いのですが、学童や保育施設の整備がニーズに追いついていないというのが、待機児童数増加の最大の理由です。
ちなみに、他県と比べて、待機児童が極端に少ない福井県は、日本総合研究所の調べによる全国幸福度ランキングが、2014~2018年の5年間にわたり第1位に選ばれています。その要因のひとつとして、「放課後児童健全育成事業」にも力を入れているということが挙げられています。
この放課後児童健全育成事業とは、保護者が共働きなどで家に帰っても誰もいない全学年の小学生に、遊びや生活の場を提供するという取り組みです。
それにより「完全失業率の低さ」「平均貯蓄率」「女性の有業率」「女性の未婚率の低さ」「出生率」なども福井県はランキング上位となっており、働きやすい環境が整っていることがうかがえます。これらは地方移住を考える上でとても魅力的ですね。
学童がない地域もある!学童未設置校区数ランキング
順位 | 都道府県 | 校区数 | 順位 | 都道府県 | 校区数 | 順位 | 都道府県 | 校区数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 北海道 | 238 | 17 | 静岡県 | 60 | 33 | 茨城県 | 34 |
2 | 東京都 | 200 | 18 | 岐阜県 | 54 | 34 | 秋田県 | 28 |
3 | 神奈川県 | 181 | 19 | 栃木県 | 53 | 35 | 岡山県 | 27 |
4 | 鹿児島県 | 163 | 20 | 青森県 | 47 | 36 | 福井県 | 21 |
5 | 愛知県 | 130 | 21 | 兵庫県 | 44 | 37 | 滋賀県 | 20 |
6 | 大阪府 | 127 | 21 | 熊本県 | 44 | 38 | 群馬県 | 19 |
7 | 福島県 | 105 | 23 | 千葉県 | 41 | 38 | 埼玉県 | 19 |
8 | 長崎県 | 97 | 23 | 福岡県 | 41 | 40 | 大分県 | 18 |
9 | 高知県 | 92 | 25 | 宮城県 | 40 | 41 | 石川県 | 16 |
10 | 沖縄県 | 80 | 25 | 山形県 | 40 | 42 | 香川県 | 13 |
11 | 和歌山県 | 74 | 25 | 長野県 | 40 | 43 | 富山県 | 12 |
12 | 愛媛県 | 71 | 25 | 京都府 | 40 | 44 | 佐賀県 | 9 |
13 | 新潟県 | 70 | 29 | 島根県 | 37 | 45 | 山梨県 | 8 |
14 | 宮崎県 | 63 | 29 | 広島県 | 37 | 45 | 奈良県 | 8 |
15 | 三重県 | 62 | 29 | 山口県 | 37 | 45 | 鳥取県 | 8 |
16 | 岩手県 | 61 | 32 | 徳島県 | 35 |
小学校区に学童保育がない地域が、全国で2,764校区あります。これは全小学校区数の14.3%と1割超えの校区で学童が未設置ということです。
定員超過だけではなく、過疎化や高齢化が進んでいる、予算が足りず設置できないなどの理由で学童に入れない子供が、全国にはたくさんいます。
実際に地方に移住してみたら、子供が通う小学校区に学童そのものがなかった…なんてことがないように、学童が校区にあるのかをしっかり確認をするようにしましょう。
学童未設置校区数では民間の学童数はカウントされていない
なんとなく、地方のほうが学童が少ないイメージがありませんか?ランキング上位には、北海道や鹿児島県などの地方が多いのも事実です。
一方で東京都、神奈川県、愛知県、大阪府などの大都市圏も上位に入っています。例えば、ランキング1位の北海道は小学校数が1,127校なので、約4校に1校の割合で学童がないということに。
続いて、ランキング2位の東京都の小学校数は1,355校なので、平均すると6~7校につき1校が学童のない校区であると考えられます。しかし、これはあくまで、各自治体が運営している学童数に関するデータです。
もし、移住を検討している地域に学童がなくても、民間企業が運営している学童や放課後こどもクラブなどが利用できる場合もあります。移住先の役所に問い合わせるなど、事前に確認しておきましょう。
安心して預けられる?大規模学童が多い都道府県ランキング
順位 | 都道府県 | 割合 | 順位 | 都道府県 | 割合 | 順位 | 都道府県 | 割合 |
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1 | 長野県 | 22.00% | 17 | 千葉県 | 4.00% | 33 | 三重県 | 2.30% |
2 | 富山県 | 14.30% | 18 | 北海道 | 3.90% | 34 | 京都府 | 2.30% |
3 | 石川県 | 9.60% | 19 | 山形県 | 3.90% | 35 | 和歌山県 | 2.30% |
4 | 山梨県 | 8.80% | 20 | 群馬県 | 3.90% | 36 | 愛知県 | 2.00% |
5 | 秋田県 | 7.70% | 21 | 新潟県 | 3.80% | 37 | 宮城県 | 1.80% |
6 | 愛媛県 | 7.30% | 21 | 福井県 | 3.60% | 38 | 高知県 | 1.60% |
7 | 奈良県 | 6.60% | 23 | 鳥取県 | 3.60% | 38 | 長崎県 | 1.30% |
8 | 東京都 | 6.40% | 23 | 福岡県 | 3.10% | 40 | 栃木県 | 1.20% |
9 | 宮崎県 | 6.00% | 25 | 埼玉県 | 2.90% | 41 | 大阪府 | 1.20% |
10 | 岩手県 | 5.80% | 25 | 静岡県 | 2.90% | 42 | 兵庫県 | 1.20% |
11 | 青森県 | 5.10% | 25 | 島根県 | 2.70% | 43 | 岡山県 | 1.10% |
12 | 徳島県 | 5.10% | 25 | 茨城県 | 2.60% | 44 | 滋賀県 | 0.60% |
13 | 香川県 | 4.80% | 29 | 岐阜県 | 2.60% | 45 | 佐賀県 | 0.60% |
14 | 山口県 | 4.60% | 29 | 広島県 | 2.60% | 46 | 神奈川県 | 0.50% |
15 | 熊本県 | 4.40% | 29 | 大分県 | 2.60% | 47 | 沖縄県 | 0.20% |
16 | 福島県 | 4.20% | 32 | 鹿児島県 | 2.50% |
厚生労働省令が交付する基準(省令基準)では、1施設の児童数は「おおむね40人以下」と定められています。大人数の環境では、指導員の目が全体に行き届かない場合があり、「騒々しく子供たちが落ち着けない」「ささいなことでケンカになる」などの事象が起こりやすいことが背景にあるためです。
しかし、共働き世帯が多い昨今では、学童に通う子供の数は年々増えているのが現実です。児童数71人以上の学童保育の割合を、都道府県ごとにランキングにまとめたので詳しくみていきましょう。
前述した待機児童数ランキングで42位だった長野県は、待機児童数は37人と少ないです。しかし、児童数71人以上の学童保育の割合ランキングでは、なんとワースト1位という結果になっています。
これは、通う子供の人数が多い学童が多数あるということです。これではせっかく学童に入れても、安心して預けられる環境ではない可能性も。親にとってももちろん心配ですが、子供にとってもかなりのストレスになります。
ストレスフリーで生活できることも地方移住の魅力のひとつですが、それは親にとってだけではありません。子供の生活の変化もしっかりみてあげるようにしましょう。
まとめ
学童保育は大きく分けて以下の3つに分類されます。
- 厚生労働省の管轄で各地方自治代が運営している「学童クラブ(放課後児童クラブ)」
- 文部科学省管轄で各自治体もしくは各自治体から委託されたNPO法人が運営し、放課後の学校の教室を活用した「放課後子供教室」
- 厚生労働省管轄外で民間企業や学校法人などが運営している「民間学童保育」
今回記述した内容は、あくまで自治体が運営し把握している数値なので、学童の種類にこだわらなければ、通える確率はもう少し高くなりそうです。しかし、学童は単に子供を預けるだけの場所ではありません。子供の成長にとって大切な時期を過ごす場でもあるのです。
例えば、クラスで学童に行っている友達が少ない場合は学童に行ってもつまらないと感じ、行くこと自体がストレスになりかねません。もし、子供が学童を嫌がるようであれば、子供を預ける手段として習い事をさせるという選択肢も。いずれにしても、かかる金額や子供の負担なども変わってきます。
子供ともしっかり話し合い、快適に移住生活を送れるよう事前にしっかり確認をすることが大切です。